暮らしのヒントがきっと見つかる、R-STOREが紹介するおしゃれな賃貸住宅ライフ、インタビューウェブマガジン

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Room No.0222017.06.30

「暮らす」を考える

塙 麻衣子さん

Maiko Hanawa

緑の木々に囲まれたお家と、植物の為の小さな小屋。この小屋は新築でした。

緑の木々に囲まれたお家と、植物の為の小さな小屋。この小屋は新築でした。

 

R-STOREがご縁をつないだ物件と、その場所を借りてくださったお客様のその後を訪ねるR-STORE FRIENDS。今回からはその名の通りR-STOREとご縁のある「FRIENDS」の暮らす物件もご紹介していきます。

その第一弾として訪れたのはR-STORE初の実店舗である鎌倉支店のインテリアディレクションを担当した塙さんの自宅兼ガーデンスタジオ。ご自宅が出来るまでのストーリーを伺ってきました。

 

道路からのアプローチ。ここを上がってくるだけでワクワクします。

道路からのアプローチ。ここを上がってくるだけでワクワクします。

 

ーお庭に足を踏み入れた瞬間にこの家の虜になってしまいました。一体どうやってこの素敵な家に出会えたのかお話を聞かせてください。

 

(塙さん)私がベンチャーのデベロッパーで働いていた時に、川崎市宮前区のマンションを買ったんです。

主人がネットで見つけてきたいわゆるファミリー向けの良くある感じの新築マンションで。

ずっとインテリアの設計や施工の仕事をしていたので、

本当は中古マンションを買ってリノベーションをしたいなぁと思っていたのですが、

資産的なことも考えて新築を選んだんです。

その後、一人目を生んだ時に勤めていたデベロッパーがリーマンショックで倒産しちゃって。

子供を産んでもずっと働きたい人間だったので、小さな設計事務所に転職をしました。

 

でも実際は周りがバリバリと夜中まで働く中、

子育てをしながらだと時間的な制約もあって大きなプロジェクトを任せてもらえず、

当然のごとく営業事務の様な事をやっていたんですね。

で、私がこの仕事をやっている意味は無いなぁと思って転職を決意したんです。

その当時住んでいた川崎市宮前区って昔から植木屋さんや植木の生産者が多い地域なんですよ。

それで本当に安直なんですが、植木屋になろうと思って地元の植木屋さんに弟子入りをしました。

 

ー転職先が植木屋さんで、しかも弟子入りって…。すごい決断ですね。

 

(塙さん)植木屋さんって日が昇ったら仕事をして、日が暮れれば終わるし、

しかも手に職も付くから良いなぁと思ったんですよね。

実際働いてみたら、早朝から仕事をして、お昼ご飯を食べてまた働いて、

三時になったらおやつを食べて、日が暮れたら終わり。

しかも季節も感じられて、本当に人間らしいと云うか設計をしていた時とは真逆の生活で、

自分にすごくフィットしたんです。

 

そんな植木屋の仕事をしていると、マンションが嫌になってきちゃったんですよね。

バルコニストじゃ無いですけど、ベランダで植物を育てるには広さが足りないなぁと。

しかも子供が上が女の子で下が男の子なので、

5年後、10年後を考えたらその当時のマンションでは手狭だなぁと感じて。

それで新たな家を探そうって事になったんです。

 

ーなるほど。その植木屋での修行が今のThe Landscapersに繋がるんですね。次の家の候補として最初から鎌倉が視野に入っていたんですか?

 

(塙さん)いえ、最初に検討していたのは横浜市青葉区の寺家町(じげちょう)という所です。

植木屋時代に現場で行ったんですが、里山の保全が行われている地区なんですよ。

まさに平成狸合戦ぽんぽこみたいな場所で、田園風景があって、水車と川があって、蛍がいてっていう。

横浜のど真ん中に本当にいきなり里山がぽこっとあるんです。

個人的にすごく気に入って、ここに住めば今の仕事も続けられるし、寺家町で家を買い替えたい熱が高まって。

休みの日に家族を寺家町に連れて行ったらすごく気に入って。

家族みんなで家を買い替えたい熱を上げて、寺家町に家を買うぞと。

でも調べてみると農業をやっている人じゃないと土地の取得が出来ない場所だったんです。

保全地区っていうのもあって、なかなか住むことが難しくて泣く泣く諦めました。

 

その後近郊を探したんですが、

なかなかピンとくる場所が無くてどうしようかなぁと思っている時に、

インターネットで主人が色々と調べていたら、ここの情報がポンっと出てきたみたいで。

でも、募集要項が今まで見たことが無いような内容で、嘘でしょって感じでした。

全部で210坪程あるんですが、超破格だったんですよ。

だから何か(問題が)あるんじゃないかって疑っていたんですが、

内覧できるって事だったので、半分冷やかしみたいな感じで見に行ったんです。

それがちょうど3年前の5月でした。

 

実際に見に行ったら、庭もボサボサで家の中も(周りが木に覆われて)真っ暗で。

でも何かピンときたんですよね。玄関を見た時に、今じゃ作れない作りで。

いうなれば裕福な方がしっかり作った家だって一目でわかったんです。

家の基礎も見たんですが綺麗で。

私ずっとリノベーションとかをしてきたので、リノベーションもできる物件で、

しかも庭もあるから好きなようにできる。

これはやりがいがあるなぁと思って。

内覧した夜に主人にどう思う?って聞いたらお互い良いと思っていて。

「いきますか?」

「いきます。」と。

そこにあまり多くの言葉は無く。

 

ー(爆笑)そんな短い言葉で家の購入を決断出来るんですね!

 

内装をそのまま活かした玄関

内装をそのまま活かした玄関

 

絵やインテリア、雑貨などはご主人の正樹さんのセレクトが多いそう。

絵やインテリア、雑貨などはご主人の正樹さんのセレクトが多いそう。

 

風の通る室内でモビールが揺れていました。

風の通る室内でモビールが揺れていました。

 

娘が4月に入学してすぐだったから申し訳なかったし、

私も植木屋の仕事をやめなきゃいけないし、

鎌倉に来たら今まで築いてきた仕事と生活の基礎をすべてまた変えなければならないので、迷いましたけどね。

それで一応問題がある物件じゃないかを某不動産投資顧問会社に勤める兄に色々調べてもらって、

問題無い事が判ったので、内覧から1週間後に契約をしました。

 

ー売買物件で内覧から1週間後の契約って、なかなかのスピードですね。

 

(塙さん)前の家の時も主人がネットで探して来て、内覧をしてその1件目で決めたんです。

ピンと来たらすぐ買っちゃうみたいです。

 

ー普通買えないですけどね。ところで植木屋での修行って何年間くらいだったんですか?

 

(塙さん)4年半くらいかな。下の子が産まれて6か月位で修行に出たんで。

月曜日から土曜日まで仕事で、日曜日だけが休みなんですね。

日曜日は溜まった家事を総ざらいする生活。

そんな生活なので、植木屋時代は子供達に余裕を持って接する事が出来なかったんですよ。

なので植木屋は続けたかったけど、

鎌倉に住む選択を選んだのをきっかけに辞めて自分でボタニカルブランドを作る事にしたんです。

 

ーこの物件への引っ越しが起業するきっかけだったんですね。

 

(塙さん)起業って言っても、一旗あげてやろうって云うよりは、

楽しく小遣い稼ぎができたらぁ〜位で考えてたんです。

子供達におかえり〜って言ってあげられるくらい余裕のある感じで。

 

ーこの物件を購入してから、改装とお引っ越しまでにどのくらいの時間がかかったんですか?

 

(塙さん)引っ越しは2014年の夏、お盆空けにしました。

 

ー5月に購入してから引っ越しまでの期間短くないですか?この家ってどういう状況だったんですか?

 

(塙さん)解体後そのまま引っ越したんです。

 

ーえ、解体後ですか?解体した状態で住んでいたんですか?

 

(塙さん)写真見ます?

 

(一同しばし写真を拝見)

 

大きな壁には息子さんが作った「にじ色みかん号」が。

大きな壁には息子さんが作った「にじ色みかん号」が。

 

大小のビーチサンダルが並ぶウドデッキのベランダ。

大小のビーチサンダルが並ぶウドデッキのベランダ。

 

家の外装やサッシはそのまま。

家の外装やサッシはそのまま。

 

(塙さん)2階に子供部屋があるんですけど、

そこは全く手を入れていなくてそのままなんですね。

解体中はその部屋に家族4人と犬一匹で住んでいました。

引っ越しの段ボールに埋もれながら。

 

ー住んでる部屋以外は窓も無く虫も入りたい放題ですよね。お風呂も無かったんですよね?その状況でお引っ越しされたんですか?

 

(塙さん)そうです。窓もカーテンも無く、虫は入り放題の全オープンです。

お風呂も無くて車に乗って銭湯に行ったりしてました。

 

ー車に乗って銭湯!大変そう!。

 

(塙さん)とりあえず1階にユニットバスだけ入れてもらいました。

1階奥にお風呂場があるんですけど、

そこまで行くには解体中の床の梁を平均台のように渡っていかなくちゃいけなくて、

毎晩子どもの手を引いてお風呂に入りに行っていました。

 

ー解体中の家に住むなんて経験、聞いた事が無いです。子ども達楽しかったでしょうね!子ども達この頃の記憶ってありますか?

 

(塙さん)下の子が3歳、上の子が6歳の頃なので記憶ありますよ!

下の子が幼稚園で毎週本を借りてくるんですけど、

「僕の家ができるまで」という大工さんが自分の家を作る行程を描いた絵本を借りてきた事があって。

その本を読んでからは、息子が毎朝大工さんが来るとタオルを持って来て、ねじり鉢巻きをしろと。

ねじり鉢巻をしてあげると、スタタタタと大工さんの所に行って道具を運んだりしていました。

大工さんも満更でも無い感じでしたね。

それなので、子供達はこの家が出来ていくのを私と一緒にずっと見ていました。

主人は東京に勤務していたので、朝仕事へいって、夜帰ってきて、進み具合に「お〜〜〜っ!」て感じで。

ストレスを溜め込んでるのは私だけでしたね。

 

ーそうですよね、会社の立ち上げもほぼ同じタイミングなんですよね?加えて家の工事も見て…本当に大変でしたよね。

 

(塙さん)図面を描いて、主人の意見も取り入れながら、解体後の架構を大工さんと見て修正し、工事を進めていました。

材料とかも安くする為に自分で発注して、ショールーム行って、と全部やっていました。

 

ーなかなかハードですね…。しかも家が完成する前に引っ越すって結構大変そうですし、あまり聞いた事が無いんですが、何か理由があるんですか?

 

(塙さん)第一にやっぱり金銭的な面がありましたね。

前の家が売れないと買えないから、自分たちでがんばって売りました。

不動産情報サイトに載せる文章から写真からすべてディレクションして、

居住中の内覧だったんで急な内覧依頼もなるべく断らずにがんばりました。

そのがんばりもあり売れたんですが、

新しい家が完成するまでの仮住まいを探すとなると、またお金もかかるし、

子供達も場所が変わったりで大変だなと思って。

それで家をリノベーションしながら住む事にしたんです。

 

ー普通は施工される方嫌がりませんか?何だかずっと施主に監視されているみたいで。

 

(塙さん)普通はそうですね、嫌がりますね。私が逆だったら嫌です。

でも大工さんも施工業者さんも、昔から一緒に仕事をさせて頂いている方々なので、

相談したら良いよって言って下さって。

住みながらのリノベーションは大変ではあったんですが、住みながらだったからこそ良かった面があって。

主人が施主で私が設計屋と工務店さんの立場みたいな感じだったんですが、

毎日主人が帰って来ると現場の進み具合を見て、

あーでもないこーでもないとプランの変更をしたりしていました。

それって現場に居ないと出来ない事なんですよね。

普通の人は設計図面を見ても3Dで捉える事が出来ないんですよね。

なので工事を進めつつ意見ややりたい事がポロポロ出てくるので、

仮住まいをしていたらこうはならなかったなぁと。

 

ー作りながら住むって言うのが今回のテーマですね〜。それにしても家を作るのって本当に大変じゃないですか。途中で丸投げしたくなりませんでしたか?

 

(塙さん)丸投げしたいって感じは無かったですけど、図面を書くのが嫌になりました。

途中、漫画でいい?って言って、途中からスケッチになりました。

でもその方が施工する側には分かり易かったみたいで。

 

ーこれって冬が来るまでには完成していたんですか?

 

(塙さん)8月にスタートして10月末に完成したので、時期も本当によかったんですよ。

これが冬なら絶対無理でしたね。

 

ベランダの下には植物達のハウスが。この庭で事務仕事をする事もあるそう。

ベランダの下には植物達のハウスが。この庭で事務仕事をする事もあるそう。

 

この階段を上がっていくと玄関。

この階段を上がっていくと玄関。

 

お隣さんの庭と分ける壁も植物をふんだんに使って。

お隣さんの庭と分ける壁も植物をふんだんに使って。

 

収穫済みの梅の木の下に落ちていた梅の実

収穫済みの梅の木の下に落ちていた梅の実

 

ー今回アールストアの鎌倉店って塙さんが内装のディレクションをされたんですよね?

 

(塙さん)そうですね、アールストアの代表とIDÉE時代の同期だったんです。

そのご縁もあり、せっかくだったら鎌倉の会社にお願いしたいと声をかけていただいて。

うちの店舗のAROUNDみたいにしてくれと。

本当に大まかなイメージと使い方だけ聞いてマルっと任せて頂きました。

 

元パン屋さんを改装した店舗「AROUND」

元パン屋さんを改装した店舗「AROUND」

 

まるでリビングのような店内

まるでリビングのような店内

 

植物との暮らしかたのヒントが詰まっていました。

植物との暮らしかたのヒントが詰まっていました。

 

ー普通の家とか店舗も内装とかお願い出来るんですか?

 

(塙さん)うちは主が植物なので、それに加えて内装も。

とご依頼頂ければやりますが、がっつり設計ってなるとかなりの時間もかかる事なので、

ご相談に応じてって感じですね。

私たちは家の中と庭の関係も大事だと思うし、暮らし方を一番のポイントに置いているので。

 

ー暮らし方の提案って素敵ですね。植物単体で見ても、それをどういう風に暮らしに取り入れたら素敵になるかなんてなかなか素人には分からないですもんね。いやぁ、暮らし方をポイントにしているって言葉、響きます。

 

(塙さん)その根源はやはりIDÉE時代の経験だと思うんですよ。

家具にまつわる内装だったり、食だったり、食器だったり、植物だったり。

“暮らし”にまつわる事ならどこまででもやりますよっていう。

私たちのブランドを見せる時にも、空間の中にある植物の雰囲気を見て頂きたいと思っています。

 

ー建物かっこいいのに植物が残念な物件とかも結構ありますもんね。

 

(塙さん)そうそう。私が植木屋になった理由なんですけど、

内装設計をやってる時に外構(エクステリア)もやって下さいって依頼を頂くことがあったんです。

でも全く無知の分野なので塀の一つも建てられないし、植物なんて桜と梅の違いも分からなくて。

その世界を知りたいと思って、植木屋に飛び込んだんです。

最初はずっと草を刈ってました。もう本当に恥を捨ててって感じでしたね。

鎌ってどうやって使うんですか?ってレベルだったので。

 

ーなるほど、この理由が初めにおっしゃっていた転職の話に繋がるんですね。腑に落ちました。でも初めはずっと草刈りなんて本当に弟子入りって大変そうですね。でもこの植木屋での修行が今の御社の強みになったんですもんね。

 

(塙さん)そうですね、植物だけでは無く、その下のプロダクトも作ってこそだったり、

植物を置く場所の周りの環境も提案して作ったりする事ができるって云うのが、

普通の花屋さん等とは違う、うちの強みになっていると思います。

 

ご主人でビジネスパートナーでもある塙正樹さんと。

ご主人でビジネスパートナーでもある塙正樹さんと。

 

 

家との出会いから家が出来るまでー。

 

一冊の本になりそうなストーリーとスタイルのあるお家でした。

 

家という“点”ではなく、暮らしという“面”で考える。

 

塙さんのお話を聞いて自分の暮らしをじっくり見直すきっかけを頂きました。

 

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