Room No.0072014.07.25
生活を楽しむ、きっかけをくれた部屋
田中聡志さん & 藤江泉さん
Satoshi Tanaka & Fujie Izumi
初々しいカップルの二人が暮らす部屋を訪れました。白と木を基調にしたすっきりとした空間は「部屋の乱れは心の乱れ」という言葉まで飛び出した田中邸の取材、お伺いして納得です。随所にこだわった空間の心地よさは、お二人の人柄と丁寧な暮らしを体現させてくれるものでした。
―住みはじめたのはいつですか?
去年の12月半ばから住み始めました。それまでは神奈川の厚木に住んでいましたが、新卒入社した会社に4年勤めてはじめて転職することになったことをきっかけに引っ越しをしました。現在の勤務先は水道橋です。東京に住むのであれば、一緒に住もうということで彼女(泉さん)と暮らし始めました。
―この物件に出合ったきっかけはなんですか?
彼女が見つけました。リノベーション物件が良かったのでR-STOREで探しました。彼女の実家から近い西武線沿いで、新宿まで30分以内で行ける場所、が条件でした。井荻という駅は、静かでなかなか良い住宅街です。ごちゃごちゃした駅から通うのはせわしないしバスや電車で中央線の駅までアクセスしやすい点も気に入っています。
―入り口を通ってくるときに、一階にデザインオフィスがありましたね。
この建物の大家さんが営んでいる設計事務所です。大家さんが、昨年の11月にマンション一棟を丸ごとリノベーションしました。入り口に入ってすぐのところに開放的な事務所があるので、住人はみな必ず挨拶をします。顔が見える関係というか、とてもオープンですね。
―内装について教えてください。とてもシンプルで、センスの良い内装ですが、入居当初からこの感じだったのですか?
お互いに物件に求めたかったことは、無垢の木の素材感、(床材はオーク材を使用、シェルフ・テーブルなどオークのものが多い)白い壁のバランスでした。もともと、インターネットで見つけた時点でほぼ決めていました。価格帯も魅力的だったんです。大家さんは少し安くしすぎたと思っているみたいですが(笑)1フロア5世帯が入っているのですが、応募当初はカップルや夫婦など申し込みが殺到したようです。
―家具も統一感がありますね、どうやって揃えられたんですか?
前の家で使っていた家具はほぼ捨てました(笑)。インテリアへの意見の相違はお互いにあったのでしょうか?僕のもともと住んでいた部屋のセンスからはだいぶ変わりました。方向性は全然違いますが(笑)(―以前住んでいたお部屋の写真をみせてくれながら―)昔からインテリアは好きでずっと興味はありました。今回部屋を引っ越しして、エンターテインメント性の高い部屋からほっとする部屋になったと思います。
―部屋にいて最も落ち着くのはどんな時ですか?
ご飯を食べている時ですね。外食をほとんどしなくなりました。泉さんが作る料理がもうおいしくておいしくて。和食も、揚げ物もいろいろな料理を作ってくれますよ。二人で時間をかけてゆっくり食事するのが楽しみです。また、映画はとても好きなので、部屋の灯りを落として観ますね。
―レイアウトなどはどんな風に決めていかれたんですか?
ベッドの位置、テーブルの位置は最初から決まっていたわけではありませんでした。リビングとダイニング、のようにわかりやすい間取りではなくて、少し変化をつけたかったんですね。そこで、契約が決まってからすぐに彼女にプレゼンテーションをしました。図面に落とし込んで、配置したいと思っている家具の値段も入れて、スケッチもかいて…、ほぼその時のイメージが形になっています。ゼロから作り上げていく楽しさがありましたね。空間が仕切られてしまっていると、それ以上の遊びがないのですが、ワンルームだからこそ、さまざまな可能性を考えることができたと思っています。
―部屋の中がすっきりするような工夫はどんなことをしていますか?
ウォークインクローゼットがあるのは嬉しいですね。これがあることで、そのほかの空間が広々使えます。中には、IKEAの箱がたくさんあります。書類とか請求書、クリスマスのオーナメント、など季節でしか使用しないものなどを収納しています。収納と、家具はめりはりをつけて、主に日本の家具の産地で作られている丁寧な職人さんの技術が光るものを使いたいなと考えカリモクやマルニなどのものを多く選んでいますね。
―キッチンの使い勝手はいかがですか?
広く使えるカウンターキッチンが、この部屋の大きな魅力のひとつです。3口もあるガスコンロは、なかなか賃貸の部屋では珍しいですよね。この横の黒板は自分たちで作りました。塗装などを専門に扱う会社で加工してもって帰ってきました。ゆくゆくは献立とかレシピなどを貼って、賑やかに使うのもいいかなとか、または質感を活かしてそのままにしてもいいかなと考えているところです。充分窓がたくさんあるので、西日よけとして塞ぐことには抵抗がありませんでした。結果的にステンレスと木との相性も良くて気に入っています。
―住空間が変わったことによって、仕事にも影響があったことはなんでしょうか。
(田中さん)転職する前の私の職場にはユニフォームもあって、空間や仕事のディテールに対して神経を行き届かせることが少ない日々でした。現在はジャケットを着ていれば問題ない、自分のセンスに委ねられている職場です。住む空間が変わったことで、ますます自分らしさや自信が出てきたなと感じます。提案などは「誰が」提案するか、も大切なことなんですね。私が話すこと自体に説得力が出て、プレゼンの内容も変わったかなと思います。自分の中の引き出しが増えている事、質感の在る部屋に住んでいるという事、それぞれが少しずつ、繋がっているのかな、と思います。家は自分にとって安心し、リセットできる場所ですね。
(泉さん)あまり変わってないと思います。実家から始めて出たので、そういう意味では家事や掃除なども全てやらなきゃならないとプレッシャーは感じていたんですが、彼がとても協力的なので本当に楽しいです。おそらくもともと住空間が自分にとって大切なんだということは知っていたんだと思います。部屋は、自分の好きなものを凝縮した居場所なんです。言い換えれば自分自身だとさえいます。この部屋を観てもらえれば、私という人がある程度わかるんです。だからこそ自然体でいられるし、心地よい日々なんだと思います。
部屋が散らかっていたり、洗濯物が溜まっていたりすることが嫌だと話す田中さん。部屋の乱れは気持ちの乱れ。空間が循環していると、気持ちも心も循環すると言います。また、質感も大切な要素。質のいい空間にいると質のいい気持ちになれる。お二人の笑顔をみていると、空間のちからってなんて偉大なんだろうと思いました。とにかくフレッシュな日々が楽しくてたまらない!そんな二人のエネルギー、輝いていました。(文:stillwater 玉置純子/写真:松園多聞)