Room No.0122014.12.15
エシカルな家具店、麻布十番
gleam 麻布十番
gleam azabujuban
仲間二人ではじめたというインテリアショップ「gleam」、そう聞いて訪れた今回の物件は麻布十番の賑やかな通りから少し入った路地の途中にあるシンプルで気持ちの良いお店。古材や廃材を生かした家具作りをする、という時代と呼応ずるものづくりに期待が高まります。前回に引き続き今回も読者のみなさんが訪れることのできる物件を取材しました。わくわくする、素敵なお店です。
-「gleam」は、インテリアショップなのですね。木のいい香りがします。
もともと僕(宇戸さん)と高谷(この日はいらっしゃらず)は、以前働いていたインテリアショップの同僚同士だったんです。6年前に二人でこのブランドを立ち上げました。これまではインターネットでの販売のみだったのですが、9月にこの店をオープンさせました。現在は神奈川県にも工房を持ち、デザインをし、定期的に東南アジアへ材料を買い付けに行きながら、この店で家具を販売しています。
-頻繁にアジアに行かれているのですか?
年に3回、インドネシアのジャワ島にいきます。役目を終えた船の木や枕木、古民家などの古材を探し、制作する為です。これらの風合いが好きで、見つけた当初は何かに活かせる方法はないものかと考えたのが「gleam」のきっかけです。日本の住居環境に合うよう私達2人でデザインを進めていますが、鉄の脚も天板も基本的には現地で職人さんに制作してもらい、日本に届いてから最終的な組み立てと仕上げを行っています。
-どういう条件でこの物件を探していたんですか?
まずは、リノベーションがOKなところですね。50平米以上で広々と使える空間の抜けが良い物件を探していました。さまざまなシーンを組んで家具を配置するためです。立地に関しては、人通りがほどほどにあり、駅が近く、できれば1階。これは、お客さんのアクセスもありますが、家具の搬入と搬出があるので車から出し入れし易いとディスプレイ変更などが楽になるのです。
-麻布十番という立地はいかがでしたか?
エリアの条件を特定して探していたわけではなく、麻布十番だったのはただの運命です(笑)。でもこのエリアに一度に2箇所の物件が出たんです。これは、縁があるなと、思いました。それで、訪ねてすぐに気に入って決めたんです。築45年の古いマンションの普通の住居用の部屋でした。
-具体的にどんな工事をしたのですか?
外に向かっているベランダを壊して、入口を作りました。かつて玄関だったところは、現在はストックルームになっています。工事期間は予想を上回り、半年くらいかかりましたね。僕らも工事に参加して、外壁の工事などなかなか大変な作業で一体いつ終わるんだろうかと途方に暮れましたよ。
-お二人の意見が別れたり、苦労したところはありましたか?
それが、全くもめなかったんですよ…。仲が良いんですよね、僕ら。仕事仲間というより、プライベートでも友達や共通の知り合いも多いですし、お互いの好みを知り尽くしているので、それぞれがこんなのどうかな?と提案すると、あ、いいんじゃない。みたいな感じで淡々と決まっていきました(笑)。お互いマイペースな性格みたいです。
-通販で家具を販売していた頃に比べてどんなことが変わりましたか?
ストレートにお客さまと直接やりとりできることは、すごく励みになりますね。
オリジナルのものは、欲しいといっていただいたら、1週間くらいでお届けできます。とはいえ、どの商品も古材を使っている1点ものなので、風合いにこだわられる方も多くいらっしゃいますから、在庫の写真を見ていただいたり、店に取り寄せて見ていただいたり、できるだけ好みに寄り添って選んでいただけるようにしています。
-家具の、というカテゴリーについてはどうお考えでしょうか?
僕らは、扱っているものを何かのカテゴリーにあてはめようとは思っていないんです。使って頂く方のライフスタイルに幅広くフィットするようデザインもシンプルに考えていきます。やはりこれらの古材を扱う理由は、人工的には出せないテクスチャーと、無垢材の手触りや風合いです。これはなかなか新しい木材を使った家具には感じることのできないものだと思います。もうひとつは、資源を大切にするという観点ですね。たくさんの良いものが捨てられているのを知り、こういう活動につながっていきました。
-頻繁にディスプレイ変えされるんですか?
しますね。本当に不思議なんですけど、店のレイアウトも倉庫の中の在庫も、定期的に動かすと不思議とお客さまに求められるようになるんです。配置を動かすだけで、急に売れたり(!?)。信じられないけれど、あるんですよ。本当に不思議です。やはり家具がまとっている生きた空気があるんだなと思います。
-これからの、家具との向き合いかた。
求めてくださる方は、若いかたから40代、50代のご夫婦など幅広く、良いものを長く大切にしながら使いたいと思っている人が本当に増えたなと感じます。物件をリノベーションして住む人も増えましたよね。そういう人のためにも、材料から仕入れている僕らの強みは、カスタマイズしてオーダーできるという点にあります。そうやって誰もが自由な空間やインテリアを手に入れていける過程で、自分が何を求めているのかを探っていくんだろうなと思います。
丁寧にお話をしてくださったのは宇戸さんでした。これまで訪れた物件のなかでも、再び訪れることのできる具体的な目的地ができたと、嬉しくなりました。店内に漂う空気は東南アジアののんびりとした香り、それからスタイリッシュだけれどどこか温もりのあるインテリアが迎えてくれます。麻布十番のゆったりした空気も、お二人のお店と人柄にあっているなと感じました。やはり、お店は街のなかにあってこそ、その個性をより伸ばしていくのですね。ぜひ、足を運んでみてください。
(文・stillwater 玉置純子 写真・松園多聞)
2008年に高谷弘志氏と宇戸恒平氏が立ち上げた家具ブランド「gleam」。インドネシアを中心に、インド洋の島々で使われてきた枕木、古民家、舟、ドラム缶などの廃材を生かして、あたらしい家具や雑貨として生産する手作りの家具ブランド。店内には廃材を生かして作ったオブジェや植栽、小物なども並び独特な世界観を作っている。9月に初の直営店がオープンしたばかり。
東京都港区元麻布3-10-9 1F
Tel. 03-6804-6308 営業時間|11:00~20:00 火曜定休 http://gleam.jp/